蓼食う虫

『明日出勤して。』
その言葉で身を刻まれたかのように、顔を歪めた。

仕事量はどれくらいなのか?
月曜日まで食い込むのか?

苛立ち、焦り、諦め、自負、功名心と渦巻く感情に、計算が加わり仕事が手に付かなくなる。

とにかく落ち着かねば、用もないのにトイレに行き手を洗い続ける。
流れる水の音、冷たい水の感触、次第に心が洗われていく気がした。

好きで始めた仕事ではないか。
初心を思いだし、胸を張る。

備え付けの鏡の中に、いつもの自分がいた。

その鼻は微かに右に傾き、口許はだらしなく開かれていた。